受賞作品展示 作文部門
令和4年度(第59回)受賞作品

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全国都道府県教育長協議会会長賞

お母さんの仕事

鹿児島県 指宿市立開聞小学校 4年

竹山 達貴

 「行ってきます。」
ぼくが言うと、お母さんは行ってらっしゃいではなく、
「お母さんも行ってきます。」
と言って、ぼくが学校に行く七時には仕事に向かいます。
 お母さんは、じいちゃんとばあちゃんといっしょに牛をかっています。ぼくが小さい時は日曜日は仕事が休みだったけど、今はばあちゃんが足が悪くなってあまり仕事ができなくなったので、お母さんは毎日仕事に行くようになりました。牛の出かがある日は、ぼくよりも早く家を出るし、お兄ちゃんの野球がある日も、朝早く仕事をしてからおうえんに行き、終ったらまた仕事に行きます。
 そんなお母さんのロぐせは、
「たつきは大きくなったら、一しょに牛をかうよね。」
です。ぼくはいつも、
「ぜったいいやだ。」
と言います。なぜかというと、休みが一日もないし、遠くまで遊びに行けないし、お母さんはいつも、
「つかれた、つかれた。」
と言っているからです。ぼくは、どうしてお母さんはそこまで仕事をがんばるのかふ思ぎに思っていました。
 ぼくは夏休みに牛小屋の手伝いに行きました。まずは、ほうきとチリトリを持ってエサが入っている場所のそうじをします。牛小屋が六とうあるので、そうじだけで一時間かかって、あせでびっしょりになりました。次にわらやし料を牛にあげます。ぼくがかたまりのわらをほぐしていると牛が近づいてきて、むしゃむしゃ食べてくれるのがうれしいです。お母さんがし料を牛にあげていたので、
「ぼくもやってみる。」
と言って、一りん車で運ぼうとしたけど、一りん車はびくとも動きませんでした。し料を入れた一りん車は七十キロくらいあるそうです。お母さんはそれを軽がると何回も運んでいたのですごいなと思いました。お母さんが仕事をしながら牛小屋をキョロキョロ見回していたので、ぼくが、
「まっすぐ前を見て仕事をすればいいのに。」
と言うと、
「牛の様子をチェックしているんだよ。」
と教えてくれました。牛の様子をいつも見ていないと、牛の変化に気づけないで牛が病気になってしまうことがあるそうです。エサやりが終わったので、
「やった、やっと帰れる。」
と言うと、お母さんが、
「まだだよ。子牛は何回かに分けてエサをあげないといけないから。」
と言ったので、ぼくはがっくりしてその場にすわりこんでしまいました。その後もお母さんは仕事をつづけて、終わったのは十一時半でした。帰りにお母さんが、
「手伝ってくれてありがとう。助かったよ。」
と言いました。だけどぼくは、
「昼からはもう行かない。」
と言いました。暑いしつかれるし、牛は大きくてこわいし、お母さんはどうしてこの仕事をがんばるんだろうとやっぱり思いました。
 夕方、お母さんが、
「聞いて、聞いて。」
とニコニコしながら帰ってきました。
「何かいいことあったの。」
とたずねると、
「この前出かした牛が全部A5ランクだったのよ。」
とうれしそうに言いました。そして、
「大切に育てた牛を出かするのはふくざつな気持ちだけどおいしいお肉になってそれを食べた人がえ顔になれることがうれしいね。」
と言いました。たしかにおいしい肉を食べるとしあわせな気持ちになります。みんなのえ顔をみたいから、お母さんは大変な仕事をがんばれるんだなと思いました。
 お母さんは上きげんで、
「たつき、大きくなったら一しょに牛をかおうね。」
と言いました。お母さんのうれしい気持ちも少しは分かる気もするけど、やっぱり休みが一日もないと思うと、ぼくはすぐに返事ができませんでした。

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